A Brief History of Seven Killings を読んで
2017年 02月 04日
ジャマイカ人作家、マーロン・ジェームス作のこの本、
読み終わるのに日にちがかかったし、読み終わってからも本を手にとって、ページをめくっていたりする。
この、読みにくい本がアワードをとったというのがまた興味深すぎる。
単にパトワだから読みにくいというわけではなくて。
(パトワは読む言葉ではないしね)
1976年12月3日、56 Hope Roadで起きたボブマーリー狙撃事件を軸に、
何人もの人物が登場するフィクション。
ギャングの親分、ギャングスター、CIAエージェント、ローリングストーンズ紙のライター、娼婦、映像ディレクター、政治家、ポリス、ドピ(幽霊)まで。
複数の人物が主役で、
説明の文章がまったくない。
その読みにくさは、
パトワの言葉そのものじゃなくて、ジャマイカ人特有のへそまがりチックなものの喋り方
固有名詞を使わずに形容詞ばかりで喋ったり、それも含めてパトワというのかな。
ボブマーリー狙撃事件を軸にしているものの、
ボブマーリーは主役ではなく、
ボブマーリーという名前は小説の中にひとつもでてこない。小説の中では「シンガー」としかでてこない。リタさまは「ワイフ」、ドンテイラーは「マネージャー」と書かれていて、
それがまた、読んではいけないものを読んでる秘密結社感(?)というか、どきどきする。
バイオレンスの記述も多く、
暴力的なのに叙述的な表現というか、
こんな、こってこてのジャマイカのネタで、ジャマイカに関わりのない人にはわからないであろう記述で、
このようなすばらしい文学的価値のある小説ができ、
そして名だたるアワードをとったというのが、
やっぱりキングストンは文化的に面白い街、崇高ですらあるんじゃないだろーか、
と、この本を読んで改めて思った次第。
わかる人にはわかるジャマイカ美学。
わたしは、わかりにくい本を読むとき、音読をするのだけど、
ギャングのメンバーのページになると、ページのほとんどがバッドワードで、
声出しできなくなってしまう。
ギャングの名前とかは実在する名前から少し変えてあって、それがまた想像力をかきたてられる。
この本、もうギブアップかも、と思いつつ、惰性で読み進めていった箇所もある。ところが、(なんだかわからないなりに)、そのうちのめりこんでしまった。
本の著者にも敬意を表するけど、この本をブッカー賞に選んでくださったお偉い様方、
この本を認めた多くの人にこそ敬意を表したいよ。
ジャマイカの独自のセンスは、なかなかジャマイカ人やジャマイカを知る人たち以外には伝わりにくく、とくに言語の独自性といったら顕著で、でもそこがまたジャマイカの魅力なんだよね。
ボブマーリーの時代のレゲエ、ジャマイカ現代史に興味のある人、
ジャマイカのギャングねたやボブマーリー狙撃事件のあらましを多少知っているひとにおすすめしたい本です。
現在は、アメリカ在住のマーロン・ジェームスさん。
次も、マーロン・ジェームスの本をつづけて読みたい。